成約実績cases

事業成長を見据えて──M&A検討の末にたどり着いた「戦略的資本業務提携」という選択

創業から約10年、急成長フェーズに差し掛かったスパイスファクトリー。営業利益はIPOを視野に入れられる水準に達していました。多くの企業なら迷わず上場準備に進むタイミング。しかし、高木社長は悩んでいました。

──「IPOで資金を調達するべきか、それともM&Aで企業価値を高めるべきか」──

その高木社長の悩みの解決したのはSBI辻・本郷のFA(フィナンシャル・アドバイザー)から提示でした。FA(フィナンシャル・アドバイザー)が提案したのは、財務状況と成長曲線を精緻に分析したうえでの、最適なタイミングでの資本業務提携という第三の選択肢でした。

資本業務提携元企業

社名 スパイスファクトリー株式会社
業種 情報・通信業
地域 東京都
売上 非公開

資本業務提携先企業

社名 大手上場システム会社
業種 情報・通信業
地域 非公開
売上 非公開

M&A成約インタビュー

IT業界の“人売り”ビジネス慣行に、一石を投じたい

高木社長:「360°デジタルインテグレーション事業」を掲げています。企業‧自治体等クライアントのDX推進パートナーとして、Webシステム開発、業務システムの内製化支援、UX/UIデザイン、デジタルマーケティング支援など、上流の企画設計から開発‧運用まで一貫して伴走しています。

高木社長:2016年3月にわずか3坪の雑居ビルから始まった創業時から変わらぬ課題感として、IT業界の多重請負構造を変えたいという想いがあります。
現在、IT業界の多くはエンジニア派遣やSESといったビジネスモデルが主流となっています。しかし、私たちは創業以来、その道は選ばないと固く決めてまいりました。


なぜなら、従来の派遣型ビジネスは、エンジニアという専門職の価値を単なる「コスト」や「労働力」として扱ってしまう構造になりがちだと考えているからです。たとえそれが業界の通例であっても、私たちはその現状に甘んじることなく、エンジニアが真に価値を発揮できる新しい在り方を提示したい。そんな強い思いで事業に取り組んでいます。

高木社長:私たちの特徴は、IT業界でよくある“仕様書通りに作業する下請け”ではないということです。私たちは自社でサービスを企画し、直接エンドユーザーの声を聴きながら開発を進めています。ユーザーが何に困っていて、どんな体験を求めているのかを理解した上で、デザインから開発、そしてPRまでを一気通貫で行います。だから、単なるシステム開発会社ではなく、サービスの価値を一緒に創るパートナーでありたいと思っています。

高木社長:創業期は本当に手元資金が少なく、人手不足も常に悩みの種でした。そのような苦しい時期でも、経営で大切にしていたことは二つあります。


一つ目は「無形資産を重視した経営」です。手元資金に決して余裕がない時期であっても社会との関係性構築や教育投資は躊躇なく行ってまいりました。PLやBSには載らないブランド、研究開発、人的資本──こうした無形資産を積み上げることが、長期的な競争力になると信じています。


もう一つは、「1ピクセルずつ、世界をより良いものにする。」をパーパスに掲げ、「社会貢献活動と経済成長は両立できる」ということを証明したいという思いです。これは創業時から変わらない軸ですね。社会性の部分では、当時の会社規模に対してかなり積極的に、寄付や社会貢献活動を行っています。また、受注する分野も「Priority5」と呼んでいて、公共、医療介護、気候変動、ガバナンス、教育と社会的意義の高い領域を優先的に選んでいます。

これは同業他社をみても珍しい取り組みだと思います。どうしても他社は目の前の利益を優先してしまいがちですが、私たちはより長いスパンで物事を考えています。長いスパンでは、社会貢献することがより大きな社会価値を生み、会社を成長させることだと信じております。

成長急成長フェーズで見えてきた壁──次のステップとして模索した“複数の選択肢”

高木社長:創業から約10年が経ち、営業利益の水準的には、IPO(株式上場)ができるタイミングでした。同業他社でしたら、監査法人をつけて、いわゆる「N-3」に突入しIPO準備に入るフェーズです。

しかし、私は悩んでいました。このままIPOを目指して株式上場するべきなのか、それとも別の道を選ぶべきなのか。

同業他社で上場しているスタートアップ企業を見ていると、その多くが小規模の「スモールIPO」にとどまり、新規上場企業の大半が新興市場(グロース市場)で時価総額100億円未満・資金調達額10億円未満です。

小粒のスモールIPOとなってしまうと、問題はその後です。上場後も十分な成長資金を確保できず、事業拡大が停滞するケースが少なくありません。こうした背景を考えると、「とりあえずIPO」ではなく、持続可能な成長を実現するための資本戦略が必要だと強く感じました。

スモールIPOやグロース市場への上場は、選択肢に入ったり外れたりを繰り返していました。そんな中で、FA(フィナンシャル・アドバイザー)の提案をいただいたことが大きな転機になりました。「本当にこの会社をどうしていきたいのか」──その問いに、改めて向き合うきっかけになったのです。

高木社長:次のフェーズでは、時価総額100億円を目指します。なぜか。それは、社会性と経済性の両立を世界に示したいからです。狭い日本だけで叫んでいても意味がない。より世界にインパクトを与えたい。そのために世界中の機関投資家に我々の経営を見てもらい、賛同を得ることが重要だと考えています。
無形資産の価値が価格形成に影響する状態を作りたい。チェコの元大統領であるヴァーツラフ・ハヴェルの名言に「理念だけでは戯言であり、理念なき経済は暴力」という言葉があります。私たちは売上を伸ばし、株主にリターンを返しながら、社会に対しても価値を提供する。この二つを成し遂げることが、経営者として最も重要だと思っています。そのために次の目標は時価総額100億円、東証プライム市場上場を目指すことにしました。

高木社長:正直、M&Aという選択肢はありました。当時は「100%譲渡でも構わない」という気持ちもあったのです。でも、それは“自信”というより、どんな環境でも会社をより良くできるはずだという確信でした。

よく「グループ会社に入ると自由に経営できなくなる」と言われますが、私はそうは思っていません。むしろ、日本企業の問題は、IR(投資家向け広報)の回数が少なく、投資家と経営者が分断されていることだと思っています。投資家は目先の数字ばかりと言われますが、実際はもっと話し合いたいと思っている。ただ、経営側が積極的に対話しないのが実情なのです。

私は、意見をもらうことはポジティブだと思っています。納得できないなら理由を説明すればいいし、素晴らしい意見なら感謝すればいい。だから、しっかりと100%譲渡だったとしても、グループ会社と建設的な対話を重ねていくことで会社をよりよくできると思っているからです。

その中で、荒川さんからFA(フィナンシャル・アドバイザー)の提案をいただき、3分の1の資本提携という形を選びました。いろんな会社の選択肢がある中で、非常に面白いと思い、決断に至ったのです。

M&A仲介ではなく“FA(フィナンシャル・アドバイザー)”という選択──SBI辻・本郷M&Aを選んだ理由

高木社長:欧米では主流のFA(フィナンシャル・アドバイザー)を手掛けていると知り興味を持ちました。FA(フィナンシャル・アドバイザー)は、売り手企業の利益を守る立場で、戦略的なストーリーを描きながら交渉をリードしてくれます。単なる取引成立ではなくて、『どうすれば企業価値を最大化できるか』を一緒に考えてくれるパートナーです。

「SBI辻・本郷」という社名を見た瞬間、正直「最強だな」と思いました。顧客チャネルとFA機能がセットになっている会社は、日本にはほとんどない。ネットワークがあるFAは圧倒的に強いですし、入札(ビット)形式を開催できるのも仲介にはない強みです。

もしも、仲介方式をとっていた場合、1社ずつプレゼンして条件を出し、合わなければまた繰り返す──非効率です。FAなら、まず「会社の状態」をしっかり提示し、その上で複数候補と面談を設定し、私たち売り手が選べる状態を作れます。これは本当に納得感がありました。

高木社長:「仲介モデルって、結局は売り手と買い手の間に立つだけですよね。仲介の仕組みは、売り手と買い手の両方から手数料を取る「両手取引」が基本です。両方から報酬をもらう仕組みなので、どうしても利益相反の構造から抜け出せない。買い手は当然『できるだけ安く買いたい』と考えるわけで、仲介者としては、売り手企業の価値を最大化する取り組みは難しいのです。

これは、例えるなら訴訟のときに、原告と被告が同じ弁護士に依頼するようなものです。そんなこと、あり得ないですよね。どちらの利益を守るのか、弁護士が迷ってしまうし、結局どちらかが不利になる。仲介モデルも同じで、売り手と買い手の間に立つだけでは、どちらかの利益が犠牲になる構造なのです。

荒川(フィナンシャル・アドバイザー):最初の提案は、単なる「M&Aをやりましょう」という話ではなく、会社の成長ステージを精緻に分析した上で、どのタイミングで動くべきかを示す戦略的な提案でした。

具体的には、スパイスファクトリーさんの財務状況と成長曲線を4つのフェーズに分けて整理しました。

  •  フェーズ1:財務がまだ不安定な初期段階
  •  フェーズ2:売上が伸び始め、事業の基盤が固まりつつある段階
  •  フェーズ3:さらに大きく伸びる可能性を秘めたタイミング
  •  フェーズ4:成長が一巡し、成熟に向かう段階

スパイスファクトリーさんは、ちょうどフェーズ2と3の中間ラインにあり、ここで資本提携を行えば、企業価値を最大化できる条件を引き出せると判断しました。

さらに、M&Aを行うタイミングによって、条件がどう変わるかをシミュレーションし、経営陣に「今動くことの合理性」を明確に示しました。これは、単なる価格交渉ではなく、未来の成長ストーリーを描き、その蓋然性を投資家や相手企業に説明できる状態を作ることが目的です。

重要なのは、成長の蓋然性をどう説明するかです。FA(フィナンシャル・アドバイザー)は、依頼企業の利益代表として、戦略的なストーリーを描き、相手企業との対話を建設的に進めることができます。

高木社長:荒川さんの提案には圧倒的な納得感がありました。私が考えていたことと同じ目線で会話できたことが大きいです。

これは、私の信念である『自由度を維持しながら説明責任を果たす』という考え方と完全に一致していました。

M&Aありきではない“最適解”──検討プロセスが導いた資本業務提携

高木社長:企業の成長戦略において、M&Aは有力な選択肢の一つです。しかし、必ずしも「買収」や「譲渡」が最適解とは限りません。

今回、M&Aの検討から資本業務提携という選択に至ったのは、完全にアドバイザーの荒川さんからのご提案でした。

正直、私はこういう取材は普段受けないのですが、荒川さんのお願いなら絶対に聞く、というくらい信頼しています。荒川さんの提案は、ビジネスマンとして本当にかっこいいと思いました。荒川さんのお子さんに、「パパがどれだけかっこいいか」を1時間ぐらいしゃべり尽くしたいぐらいです。なぜなら、自分の手数料を犠牲にしてまで、私たちにとって最適な選択肢を提示してくれたからです。

さらに、この提案をしてくれるということは、私たちのビジネスを深く理解し、時間をかけて考えてくれた証拠です。こういう人の提案は、第一に信頼できます。利益相反がある中で、むしろ自分にとって損になる選択を提示する──これは本当に稀有なことだと思います。

高木社長:ストレートに言うと、100%買収や譲渡の方が、アドバイザーの手数料は高くなります。でも、今回の荒川さんの提案では、その報酬が約3分の1になる提案をあえてしてくださったのです。自分のノルマや計画がある中で、売上を3分の1にしてまで、会社の成長を第一に考えてくれる人って、本当に素晴らしいですよね。こんなことができる人は、なかなかいません。

荒川(フィナンシャル・アドバイザー):今回の案件では、高木社長が大切にされている「無形資産」をどう守るかがポイントでした。完全子会社化になると、経営だけではコントロールしきれない部分が出てきます。信念や価値観がずれてしまうと、会社の本質が失われる可能性があるのです。

だからこそ、資本業務提携という形で、双方が信頼関係を築きながら進めることが最適だと判断しました。

高木社長:本当にその通りです。こういう提案をしてくれる人に出会えたのは、運が良かったと思います。単なる数字や条件ではなく、「企業の本質を守る」という視点から最適な選択肢を導き出してくれました。M&Aありきの結論ではなく、企業の未来をどう描くかを真剣に考えて提案をしてくださりました。

資本業務提携後の変化について

高木社長:トラブルは本当にありません。むしろ、すごくいい形になっていると思います。同じ業界でも分野が違うので、形式的なPMI(Post Merger Integration 買収後の経営統合)をやるというより、理解を深める取り組みを重視しています。

例えば、毎月勉強会やワークショップを開催し、我々の会社の考え方やプロジェクトの進め方を共有しています。飲み会も含めて、ざっくばらんに交流する場を設けることで、相互理解が深まり、共同提案の案件が続々と増えています。すでに受注も始まっていて、経済性の面でも成果が出始めています。

高木社長:我々のビジネスでは、クライアントに提案するのは現場のリーダークラスです。彼らに我々のソリューションの価値を理解してもらわないと、シナジーは生まれません。だからこそ、現場目線を大事にし、草の根で活動することを重視しています。

新しい時代が始まることにワクワクしている

高木社長:AIの進化は、我々にとっても、業界全体にとってもラディカルなインパクトがあります。だからこそ、AI時代にフィットする企業体を作っていきたいと思っています。

これからは「規模が大きいことがかっこいい」というマッチョな世界から、「小さくても高収益で、品質の高いスマートカンパニー」の時代になると考えています。そういう意味で、新しい時代が始まることにワクワクしています。

高木社長:M&A仲介は使わない方が絶対にいいと思います。これは強く言いたいですね。

SBI 辻・本郷M&A株式会社のようなFA(フィナンシャル・アドバイザー)を選ぶべきです。

仲介モデルは、経営者にとってメリットが少なく、利益相反の構造を抱えています。ある程度成長した企業なら、FA(フィナンシャル・アドバイザー)は経営者側の利益を代表し、説明責任を果たす存在です。

日本ではまだFA文化が浸透していませんが、これは経営者のリテラシーを高めることにもつながります。むしろ、こうした知識を広めることは社会貢献だと思っています。全国の経営者に「M&A仲介はダメ、FA(フィナンシャル・アドバイザー)を使おう」と伝えたいですね。

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